« 2011年2月 | トップページ | 2011年4月 »

2011年3月

2011/03/24

ちょっと計算してみました

 わたくしが住んでいる名古屋市では、震災による深刻な影響は受けていないのですが、関東地方の方々は大変でございますよね。特に、水道水で放射性物質が発見されて、みなさん、ペットボトルなどを購入するのに苦労されているようでございます。これには、この放射性物質というものがどんなものかよく分からないところにも、不安を大きくする原因があると思うのでございます。それで今回は、その不安を少しでもやわらげようと思いまして、ワタクシなりに放射性物質について説明してみるのでございます。

 会見などの説明はどうも分かりにくく、不必要に不安を煽っているような気がするのでございますよね。「直ちに人体に影響が出る数値ではない」なんて言ってますが、その曖昧な言い方が良くないのでございます。ここは、ハッキリと数量的な表現をした方が過剰反応を防げると思うのです。しかし、放射能(放射線)の単位の表し方が、ちょっとややこしいのでございますよね。そこで、かんな風に理解してみてはどうでしょうか。

 まず、「シーベルト」という単位ですが、これには「マイクロ」と「ミリ」のふたつの単位があって、これが分かりにくくしている。ですから、ここでは、「マイクロシーベルト」に統一して、お話しいたします。また、被曝量を表す時の数字の分母が、「1年」だったり「1時間」だったりして、これまた比較を難しくしている。そこで、ワタクシはこの放射能(放射線)を、お店などのポイントカードに例えるのでございます。

 ここにポイントカードが1枚有ると思ってくんなまし。そのカードに溜まるポイントを、受けた放射線に例えるのでございます。で、このカードに10万ポイント溜まると、チョット健康に影響が出てくる。数百万ポイントから一千万ポイントが溜まってしまうと、生存が危ういほどのダメージを受ける、まず、この大前提を覚えておいて下さいませ。

 それで、自然界には自然に存在する放射能というのがございまして、この自然放射能をポイントに換算すると、一日分が約6.6ポイント。つまり、このカードは何もしなくても毎日6.6ポイント増えていくわけでございますね。すると、40歳を超えたあたりで、10万ポイント達成。ちょうど体にガタが出てくる年齢でございます。では、40歳ぐらいで体にガタが出てくるのは、この自然放射能の影響かと申しますと、そうではない(キッパリ!)。

 この10万ポイント(マイクロシーベルト)という数字、一度に浴びると何らかの影響が出る数字ですが、ところが人間の細胞には修復・再生する能力がございまして、ゆっくり浴びる分には、この修復機能がかなり有効に働くのでございます。もっともこの自然放射能、100歳まで生きたとしても24万ポイント。大きなダメージを得る数字には、まだまだ余裕があるのでございます。放射線というのは、微量を浴びる分には体に良いという説もございます。「ラドン温泉」なんていうのは、微量の放射線を帯びた温泉で、「放射線泉」と呼ばれております。

 さて、会見などでよく引き合いに出される「東京・ニューヨーク間の航空機往復」でございますが、これが200ポイント。1回往復すると、カードに200ポイント加算されるわけでございますね。また、胸部CTスキャンが1回6900ポイント。これはかなり大きいが、複数回行わなければ十分に余裕のある数字でございます。

 このように、「シーベルト」という単位は、放射線を浴びたときに、前述したポイントカードにどれくらいポイント加算されるかという数字なのでございます。この単位には必ず分母がありまして、「1年に○シーベルト」とあれば、1年かけてゆっくりポイントが加算されます。あるいは「1時間に△シーベルト」という場合に、30分しかその場所にいなければ、受ける放射線は半分になるのでございます。シーベルトという単位を読むときには、その分母も考慮してどのくらいの速さでポイントが加算されていくのかを考える必要がございます。

 さてさて、ほうれん草などでは「ベクレル」なんて単位が出ております。このもうひとつの単位が出てくるために、放射能が分かりにくくなっております。このベクレルは、電球のワット数に例えるのでございます。そこで、まず大きな大前提。人間はみんな、その体重に応じて、6000〜7000ワット(ベクレル)の輝きで光り続けているものだと思って下さいませ。恋人と抱き合っているときは、お互いに6000ワットの電球(放射性物質)を抱いているのと同じなのでございます。この電球(放射性物質)の光を浴びると、前述のカードにポイントが加算されていくのでございますが、電球というのは離れてしまうと暗くなりますよね。つまり、電球に近づくとたくさん速く加算され、離れればゆっくりになり、十分に距離を置けば加算されなくなるのでございます。

 水道水から見つかった数字が100〜220ベクレル(/1kg)ほど。これは、人間本来の輝き(6000〜7000)からすればそれほど影響は少ない。ただし、この人間が元から持っている放射線はその体重によって計算されまして、乳幼児ではその体重比を考えると300〜600という数字になってしまう。これを考えると、水道水の100〜220という数字は、ちょっと避けた方がいいという判断が出来ますよね。でも、「他に飲むものがなければ、飲ませてもいい」という報道もされております。「エッ? 大丈夫なの?」と思われるかも知れませんよね。それを、説明いたしましょう。

 このベクレルという単位を、先ほど申しましたポイント(に換算する式がございます。この水を「飲んだ」場合、そのヨウ素に関しましては、

  [ベクレル × 0.022 ]マイクロシーベルト

という式で、計算できます。220ベクレルの水道水1kg(=1リットル)で計算しますと、4.84ポイント(マイクロシーベルト)。大人の場合、1日に2リットルの水を飲んだとして約10ポイント。乳幼児ならば、1日に500cc飲むとして2.42ポイント。自然放射能の毎日6.6ポイントに比べれば、ビックリするほど大きな数字ではございません。「他に飲むものがなければ、飲ませてもいい」という報道の根拠は、ここにございます。もちろん、お風呂のように浴びるだけの水の場合は、受けるポイント(シーベルト)は極端に少なくなりますから、心配する必要はまったくございません(キッパリ)。

 では、どうして、それほど大きな数字ではないのに政府が用心深く報道しているかというと、安全かどうかの判断をする指標の「暫定規制値」を、「1年」という単位で決めてしまったからでございます。つまり、1㎏(=1リットル)を1年間続けて摂取した場合で基準値を決めてしまったのでございます。「暫定」っていうぐらいですから、以前から決めていたわけではなく、今回慌てて定めた数値。まぁ、これを機会に、この様な基準値は「継続的に摂取する場合」と「一時的に摂取する場合」の二通りの基準を設けておいた方が良いようでございますね。

 どうでしょうか、この様にはっきりと数字で表すと、その危険性が分かりやすいのでございます。例えば、賞味期限で単純に「新しい」「古い」って書いてあるだけだと、すごく心配になりますよね。でも「賞味期限○月○日」って書いてあると、その日付までは万感の信頼を得て食べますが、1日でも過ぎると、とたんに心配になってしまう。でも、その日付を過ぎたとたんに急に痛み始めるわけではございませんよね。この様に、曖昧な表現をせずにどこかで“線引き”をしてやると、不思議に安心感が出るのですよね。今回の食品に関する報道でも、「直ちに体に影響する〜」なんて曖昧な表現ではなく、「体重○○キロの人は、1日に△△グラム(リットル)までは摂取して大丈夫」なんていう表示にすると、あまり不安を煽らなくて済むような気もするのですが、どうでしょう?

 長々と説明してまいりましたが、少しは安心していただけましたでしょうか。放射線の影響をカードのポイントに例えてお話しいたしましたが、このポイントが溜まるということが、すぐに死に直結するわけではございません。多くの放射線を浴びると癌の発生率が高くなるとは言われておりますが、健康体の人が放射線を受けたためにいきなり末期癌になるということはございません。この場合も、もし、放射線による影響の心配があるならば、こまめに検査をすることで癌を早期発見するという事後策もございます。現在の癌は、早期発見出来ればそれほど怖くないのでございます。

 ちょっと長くなりましたが、ワタクシなりの説明をしてみました。こんな時ですから、風評に惑わされず、冷静に行動したいですよね。ではでは。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2011/03/06

“失敗できる”というのは、実は幸せなこと

 ここのところずっと、読みふけっている本がございます。『失敗百選』という本なのですが、とにかく世の中の失敗を集めて、その原因と失敗への過程を記述してるのでございます。下町の工場でのちょっとした事故から、原発やスペースシャトルの事故まで、あるいは自然災害までもが、この本の題材になっております。自然災害まで“失敗”に含むのを「あれっ?」と思うかも知れませんが、その自然災害に対する備えや対応には必ず人間が関わってまいりますので、その人間との接点に失敗が介在する可能性は出てくるのでございます。

 バラエティー番組で、「○○事故、その衝撃の真実」とか「あなたの身近の危険!」なんていうよくあるタイトルの番組、あんなんで紹介されている題材が、この本には次から次へと出てまいります。この本を数ページ読むと、そんなバラエティー番組のエピソードをひとつ見たのと同じぐらい楽しめる。もうね、ワタクシにとってはおもちゃ箱のような本でございます。そんな世界中の事故を読みふけっているときに起きたのが、ニュージーランドの大地震でございます。日本政府の対応にもちょっと注文があるのですが、それはまた別の日にいたしましょうか。

 で、話を「失敗」に戻しましょう。ワタクシ自身、失敗を防ぐ工夫というのは好きでございます。人間に失敗させない工夫というのは、道具や機材の基本デザインに結びついてくるのでございます。失敗が起こりにくいデザインを追究すると、人間と機械との接点がどんどんシンプルになり、そこに“機能美”が生まれる。この機能美というのが、ワタクシは大好き。何気ないように見えるデザインに、周到な計算が施されている、そういう所にデザイナーやエンジニアの“美学”を感じられるのでございますね。

 ワタクシのお店の中でも、この「失敗を防ぐ工夫」はいろいろやっております。例えば、レジでのお会計。お金を載せるお皿をカルトンというのですが、そのカルトンを2枚用意して、お客様から頂くお金とお返しするお釣りは別々のカルトンを使っております。このお金の出入りをひとつのカルトンでやり繰りいたしますと、お釣りの渡し忘れ事故が非常に発生しやすくなるのでございます。そこで、ふたつのカルトンを使い、まるで捕まえたスパイの交換儀式のごとく、入ってくるお金と出ていくお金を同時に入れ替えることで、うっかりミスを防ぐのでございます。

 普通の店舗ではカルトンひとつで特に問題ないと思うのですが、なぜかワタクシのお店の場合、定期的にお釣りの渡し忘れの事故が発生したのでございます。そこで、その事故のメカニズムを追究いたしますと、お金をレジに入れたタイミングで同時にお客様に話しかけられると、渡し忘れ事故が発生しやすいようでございます。その結果、先にお釣りをお渡ししてからお金をレジに入れるという手順に変更。カルトンを2枚使う手順が生まれたわけでございます。なんというか、こういうメカニズムを分析して改善していくのって、好きなのでございますよね。企業のこういう部署に就職していたら、出世したかも知れませんね。

 あと、お店とは関係ないのですが、ワタクシが長年言い続けていることがございます。エレベーターの「開」と「閉」のボタン。あれはちょっとした規格ひとつで、押し間違いを劇的に減らせるはずでございます。厳格な規格で統一させる方法もあるでしょうが、ワタクシの考えでは、たったひとつのルールで十分。「“開”ボタンは“閉”ボタンより大きくなくてはならない」というルールひとつで、全然違ってくるはずでございます。これならば、直感的に押し間違いを防ぐ効果があるとともに、エレベーターの設計者のデザイン自由度も損なわなくてすむのでございます。また既存のエレベーターにも、「開」ボタンの上に貼るアタッチメントを付けることで対応できそうな気がする。さて、どんなもんでしょうかねぇ。

 そして最後に、ちょっと怖いお話しを。この本は人間の起こす失敗を41種類に分類し、その41番目に「テロ」という項目を設定しております。「失敗」であれば「起こしたくない」という気持ちが働きますよね。ですからこの本のように、失敗例をデータベース化し検索できるようにすることには意味があるのでございます。ところがテロの場合は、“意図的に起こす失敗”ですので、失敗例のデータベースが全く役に立たないどころか、テロリストにヒントを与えてしまうことにもなりかねない。だからといってこういった失敗例を非公開にしようとする動きが出ると、それはそれでリコール隠しのような事件を起こす下地を作ってしまう恐れがある。

 さらにこの著者は、「テロ」の項目の中に「絶望感を持った若者の“道連れ犯罪”」をも挙げております。テロリストや自暴自棄になった若者には、街中のありふれた道具や交通機関など全てのものが、凶器となり得るのでございます。そして、もし設計エンジニアがテロリストや自暴自棄の青年まで考慮に入れて設計図を引かなければならないとしたら、エンジニアの仕事は非常に苦しいものになると、最後に締めくくっております。

 この本を読み終えた後、「“戦争”は人間による“失敗”ではないのか?」なんて思ったりいたしました。戦争を防ぐ抑止力として、「軍事力」や「外交」というものがございます。しかし、この軍事力や外交が効果を発揮するのは、対立する国家がお互いに「死にたくない」と思っているからでございます。ですが、テロリストはどうでしょうか? 最初から死ぬ気で行動を起こすテロリストには、軍事力も外交も通用いたしません。人類は動物と違い、“知恵”を働かせて進歩し、工夫してまいりました。しかし人類は今や、テロリストや自暴自棄の若者といった人類の知恵では防ぎようのないものと戦っていかなければならない時代に突入しているようでございます。

 さてさて、この『失敗百選』という書籍、続編もございまして、それぞれ400ページ近い厚さがあり読み応え十分なのですが、お値段もちょっと高め。でも、工業デザインに携わる人や企業の危機管理者などには必読の本だと思います。もし、よろしければ、どうぞ。

Shippai●中尾政之著
 『失敗百選〜リコールと事故を防ぐ60のポイント』
  森北出版株式会社 410ページ ¥3,600

●中尾政之著
 『続・失敗百選〜リコールと事故を防ぐ60のポイント』
  森北出版株式会社 394ページ ¥3,600

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2011年2月 | トップページ | 2011年4月 »