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2003/05/31

指揮者、やってみたいと思いませんか?

お久しぶりでございます、名古屋薫でございます。忘れた頃にやってくる天変地異のようなメールマガジン、名古屋薫のShe-mailでございます...なんていう文句が洒落にならないぐらい皆様方をお待たせしておりますね。まさしく自動廃刊処理寸前をかろうじて生きながらえている、首の皮一枚マガジンでございます。

昨年の年末に調子良くポンポンと続けて配信できたのでございますが、その後、母親の入院という事件が起こりまして、ワタクシ、アタフタでございます。そうこうしているうちに配信の機を失い、そこへ溢れかえるような雑用の波とワタクシのもって生まれたズボラ根性との相乗効果によりまして、半年近く皆様方をお待たせするような事態になったわけでございます。

さて、言い訳はこの位にしておきまして、先日、たまたま某放送局の『N響アワー』なる番組を見ておりましたら(某放送局って、番組名からバレバレじゃん)、何とワタクシの敬愛する夏木マリさんが出演していたのでございます。何というミスマッチ(注)と思いながらも最後まで見入ったのでございました。(注:実は夏木マリさんのお父さんがクラシック音楽、特にショパンを大変お好きだということ。そのお父さんの弾くショパンを子供の時から聞いていたとのことです。ミスマッチなどと失礼いたしました)

その夏木マリさん、小さい頃からオーケストラの指揮者になるのが夢だったそうな。まったく「性格まるっと男」の夏木マリさんらしい発言でございます。と、ここで「指揮者=男」のような言い方は、雇用均等法実施後の今日では問題発言かもしれませんね。しかしながら、演奏家には多くの女性も活躍していらっしゃるのにも関わらず、指揮者というお仕事に従事する女性はほんの一握りしかいらっしゃいません。女性には指揮者は無理なのでしょうか? というわけでここからが今回の本題でございます。

実はワタクシ、学生の頃音楽家を目指しておりました。指揮法などもちょっとかじり、指揮者のまねごとなども多少やったことがございます。世界初のニューハーフ指揮者になれなかったこの名古屋薫が、指揮者のお仕事というものを「男の仕事」vs「女の仕事」という観点で科学いたします。

まず、指揮者のお仕事は棒を振ることでございますから、その棒を振る「技術」というものが必要でございます。好き勝手に振っているような指揮棒でございますが、そこには「美しく、分かりやすく振る方法論」というものがございます。ただ、棒の動かし方そのものはそれほど重要ではなかったりします。むしろ重要なのはその息づかいなのでございますが、それは後のお話との関連もございますので詳しいことは後ほどというこどで。

そして、音楽に対する深い知識や楽曲を深く理解する能力。これも必要でございます。個々の演奏者は感性と技術だけで何とかやっていけたりするものでございますが、指揮者というもの、50人以上のバラバラの感性を一つに集約できなければいけません。そこには理論的な裏付けを持ってしてワガママな個々の演奏者を納得させなければなりません。そしてこの納得させるという作業が次に申し上げる要素と深い関係が有るのでございます。

50人以上の個性豊かでワガママな人たちを管理する管理能力というもの。実はこの管理能力って指揮者にとってはかなり重要でございます。もとより音楽家なんて我の強い人間ばかりでございます。指揮者が弱みを見せたりすると指揮者の意志とは別にオーケストラはどんどん勝手なことをやり始めたり、なんてこともございます。指揮者と演奏者が共同作業で音楽を作り上げているように見えるオーケストラではございますが、実は一人の指揮者と50人の演奏家たちとの「戦い」で有ったりするのでございます。

そこで、先ほど申し上げました「息づかい」でございます。たとえば、小さな音を出している部分で突然大きな音をドーンと出さなければいけないとします。演奏家というもの、急に大きな音を出すというのは大変怖いものでございます。自分だけ飛び出したり遅れたりして恥ずかしい思いをしたくないからでございますからね。もし指揮者がギリギリまで棒を小さく振っていて、その“大きな音が出るのと同時に”棒を大きく振り始めたら...オーケストラは直前までドキドキしながらその大事なタイミングに向かい、音が大きくなって棒が大きく振り始められてから初めて安心できるのでございます。

しかしながら、このような棒振りではオーケストラはいつもビクビクしながら演奏することになりますし、こんなギャンブル的なタイミング合わせは必ずしもうまくいくとは限りません。そこで、指揮者はいつも“一拍早く”次の指示を出しているのでございます。大きな音を出さなければいけないタイミングの、一拍前で棒を大きく振り始めているのでございます。その動きを見てオーケストラは安心して次の一拍を大きく出せるのでございます。この一拍早い動きで指揮者はオーケストラの「息を合わせている」のでございます。

さて、そうなりますと指揮者というもの、仕事に対する深い理解力と同時に人間の管理能力や社交性などというものも必要とされるのでございます。先ほど述べましたように、演奏家というものは必ずしも曲に対して深い理解力や細かい知識は必要なかったりします。感性と技術とでドンドンやっていけたりするのものでございます。ある意味“一匹狼”な人の方が向いていたりするのが演奏家というものでございます。

しかしながら、指揮者には大勢をまとめ上げる能力が大変必要になって参ります。これが、なかなか女性の指揮者を誕生させるのが難しい要因になっているのではないでしょうか? 男勝りの夏木マリさんなんかは、きっと指揮者に向いているかな、なんて思ったりしております。

この指揮者とオーケストラの関係って、実社会での企業とか組織などでの人間関係にも通じるものがあると思うのでございますが、いかがなものでございましょう。

リードする人間とリードされる人間との一見和気あいあいに見えても実はその裏で駆け引きにも似た戦いがあったり、若い人の仕事に対する浅い読みや間違った思いこみを深い経験と知識力で諭していかなければいけなかったり、新しいことを始めるに当たってその動機付(モティベーション)が必要だったりと...大勢が“息を合わせて”一つの目標に向かっているときは、それが企業であれオーケストラであれ必要とされる要素は同じということでしょうか。

さてさてさて、今まではクラシック音楽なんてワケワカランと敬遠していた方も、このような見方をすると少しはおもしろく思えてくるのではないでしょうか? というわけで今回は、一見豪快でかっこいいお仕事、男性が憧れる職業ナンバーワンのお仕事、「指揮者」を名古屋薫流に解説してみました。

ではでは、今回はこの辺りで失礼いたします。配信を大変待っていらっしゃった読者の方々にはお詫び申し上げます。これもひとえにワタクシ自身のズボラな性格に有るのでございます(ひょっとして「ひとえに」の使い方間違ってる?)。相変わらず名古屋薫、反省の日々でございます。では、次回をお楽しみに、バイバーイ。

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