My Favorite その2
さて、前回の配信よりチョット間が空いてしまいました。名古屋薫でございます。せめて、月に2〜3回、理想を言えば毎ウィークエンドの直前に配信したいと思っておりますが、他の締め切りと重なったりすると、ついクジけてしまう自分の弱さを反省しきりでございます。
さて、今回は「My favorite その2」と題しまして、ドキュメンタリー作品をを何点か紹介するのでございます。それぞれ「戦争」「戦争のような状況」がテーマのドキュメントでございます。ちょっと深刻そうなお話でございますが、ワタクシのいつもの口調で堅苦しくなく進めていくつもりでございます。しばし、おつき合いの程を。なお、ネタばらしは有りませんので、まだ作品を見ていない方も安心してお読み下さいませ。
●『ブラックホークダウン』
●『ブラックホークダウンの真実』(92分)
●『9.11 〜N.Y.同時多発テロ衝撃の真実』(130分)
『ブラックホークダウン』というのは、アメリカがアフリカのソマリア内乱に介入したときの“負け戦”を、ドキュメンタリー風に描いた映画でございます。100分以上にわたり戦闘シーンが続き、兵士の目から見たような生々しい臨場感が印象的な映画でございます(『プライベート・ライアン』をご覧になった方は、その臨場感がだいたい予想出来るかと思われます)。その独特な空気感のためか、封切りして半年にもなりますが、いまだに大勢の熱狂的なファンに指示されている映画でございます。
その『ブラックホークダウン』(以下BHDと略)は史実に忠実に作られておりましてそれなりに現実っぽいのでございますが、この映画の元になった負け戦を実際の映像や兵士へのインタビューなどを交えてドキュメンタリーとして構成したものが『ブラックホークダウンの真実』でございます。こちらは、映像的には地味でございますが、なにぶん「実画像の重さ」という冷たい重量感がございます。
さて、三つ目の作品はその題名から分かるように、昨年の同時多発テロの際、たまたま崩壊した世界貿易センタービルの中で撮影をしていたカメラマンの撮った映像をもとに作製したドキュメンタリーでございます。実際の映像と関係者へのインタビューという内容で『BHDの真実』と似たような構成になっております。
以上三作品、それぞれ「戦争つながり」でございます。戦争がテーマ、あるいは戦争のような状況がテーマでございます。『BHD』の臨場感は凄まじいものがございまして、どんどん映像の中へ気持ちが吸い込まれていくのでございます。戦争映画でございますから、ドキッ、ヒヤッ、ウワァ〜といった場面が有るのでございますが、そこは映画のお約束、セットであり、俳優さんの演技であり、特撮であるという“救い”がございます。
ところが、後の二作品にはその“救い”がないのでございます。いや、唯一“救い”があるとすれば、映像の中でインタビューに答えている人は、少なくとも惨状から生き残った人だということ。脚色された映画のようなハデな映像こそ有りませんが、そのジミな映像には真実の重みが隠されているのでございます。
『BHD』という映画、これはアメリカの愛国心が作った映画かもしれません。多くの著名な俳優が出演しているにもかかわらず、多くの戦闘シーンでは誰か誰だか分からない状態。その混沌さが臨場感を盛り上げてはいるのですが、こういったことは役者が「自分を主張すること」を放棄してくれなければ製作不可能なことでございます。(理由はともあれ)祖国の命令で命を落としていった兵士に捧げるという慈愛の心、それが役者の“我”を押さえ込ませているのではないでしょうか。
また同じ戦争映画である『パールハーバー』のような豪華絢爛なストーリーはこのBHDにないのでございます。ただ単に、史実に基づいて状況を説明するシーンが続くのみ。BHDとパールハーバーがジェリー・ブラッカイマーという同じ制作者によって作られているとは信じられないぐらいでございます。BHDというのは、ストーリーによって何かを演出するという映画ではないのでございます。
役者やストーリーや効果音楽による主張をことごとく放棄して映画を作る。すると最後に残るのは「問題提議」でございます。監督のリドリー・スコット自身が“これは、観客に問いかける作品であって、答えを提供する作品ではない”と述べているように、問題を多く抱えたアメリカが、未だに解決しない問題に対して、役者やスタッフが一丸となって恥や外聞や主張を殺し、観客に対して問いかけた作品なのでございます。
またBHDの原作である小説の最後にこのようなことが書かれております。
この戦闘を招いた政策決定を歴史がいかに批判しようが、
その日にそこで戦ったレイジャー部隊と特殊部隊の
プロフェッショナリズムと献身は少しも傷つけられはしない。
この言葉の向こう側に見えるのは、愛国心に溢れ祖国のために献身した若者達
の輝いた心でございます。
さて、一方『9.11 〜N.Y.同時多発テロ衝撃の真実』の中では、新人の消防士がインタビューに答えた次のような一節がございます。「消防隊は軍隊と似たところがある。僕は人の命を救うのが好きだが、ただあの惨状を見た今は、国が僕に命じれば…(長い間)…首謀者を殺しに行く」。この『9.11 〜』も事実を淡々と羅列しあまり主張のない作品なのですが、その中でもキラリと主張の輝くシーンでございます。
どの作品からも溢れているのは、「愛国心」でございます。そして、主張を抑え、どこまでも客観的に事実だけを伝え、批判や解釈はそれぞれの個人に任せる、それも共通していることでございます。飾られた言葉や映像で訴えるのではなく、只々事実だけを投げかけられる重み、その重みで押しつぶされそうになる圧迫感、そういったものを感じる三作品でございます。
BHDの舞台となったソマリア内乱での作戦失敗では、19人のアメリカ兵と1000人以上のソマリア族の命が、またアメリカの同時多発テロでは数千人のアメリカ人と十数人のテロリストの命が奪われたのでございます。この数字の逆転現象は興味深いところでございます。もちろん、二つの事件に直接の因果関係はないのでございますが、アメリカの他国への軍事介入がそもそもの引き金になっているのは、多くの人が認識していることと思われます。
この軍事介入の問題については、小説の作者のマーク・ボウデンも言及しております。「アメリカは自国の軍力や軍事介入の効果に関して‘幻想’を持っていた。今は現実を直視し、その軍事介入のもたらす結果について考えて欲しい」と。その意味では「19人のアメリカ兵と1000人以上のソマリア族の命が失われた」という恥部をハッキリさらけ出したこのBHDは、問題提議として意味のある映画でございます。ただ重要なのは問題提議だけをすること。何かしらの“主張”を盛り込んでしまうと“押しつけがましく”なってしまうものでございます。その押しつけがましくないのが、根強いファンを得ている原因かもしれません。
閑話休題。
もうひとつ「戦争のような状況」の映画を(DVDで)観たのでございます。『突入せよ!「あさま山荘」事件』でございます。こちらの方は、我を押さえるというよりも、役者を立て、脚本を立て、効果音楽を入れ、映像も俯瞰(ふかん)的...という全くの「娯楽映画」でございます。映画として楽しめるのではございますが、事実としての重みはあまり感じられないのがチョット残念ではございます。まあ、日本でBHDのような「有無を言わさぬ」映画を作ろうと思ったら、黒澤明ぐらいの強引な監督でなきゃダメかな、と思ったり...
今回はこの辺で。特に「締めくくる」ような言葉はございません。ただワタクシのお気に入りを羅列しただけ。(今回は)問いかけるメールマガジンであって、答えを提供するメールマガジンではないのでございます。
では、次回をお楽しみに。バイバーイ。
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